接点空間をさぐる-斉藤一雄
千葉大園芸学部の教授が書いた論文を集めた本。
接点空間というのは、海と陸、山と平地といったものから、庭と公道なども挙げられる。
そしてそうした空間の関係は、そんなに簡単な構造ではなく、それぞれの具体的な環境形の中で位置づけられ意味づけられている。
接点空間は、異質な空間をつなぐ空間といえる。それについて斉藤一雄はこう述べている。
自然と人間生活との関係、また人間同士の関係でさえ極度に分化している今日、接点空間を見直すことが必要なのではないだろうか。
空間の形態は大きく“開放”と“閉鎖”とに分けられる。つまり接点空間が開放的か閉鎖的か、ということである。
日本の庭園には大きく3つの流れがあって、
①高度に洗練されたいわゆる日本庭園
②明治以後新たに日本の風土に溶け込んだ外来の様式の庭園
③農家の庭
いわゆる日本庭園は、外部と隔絶することによって別天地としての空間を形成する傾向を持っていた。
それに対し農家の庭は生産と生活のふたつの環境を統合して、その職業の性質上、意図的に、風土、つまりまわりの自然システムと密接に関連してきた。ここでいう農家の庭は、農民の成長によって、ようやく近世以降形をなしたものである。
日本庭園は外部と隔絶しているとはいえ、客観的には周辺の環境に支えられてその命脈を保ってきたものである。それ単体では存続できないといえる。そうした庭園が環境悪化(川や海が埋め立てられる、など)によって劣化を余儀なくされ、その存立のために改めて地域環境システムとの関係を重視せざるをえなくなったとき、社会を含む周辺環境システムと一体となって発達してきた農家の庭は、その意味では先見的な立場をとることが出来る。
現代の住宅の庭は、どうだろうか。
農家の庭園は、自然のポテンシャルを<守りながら使い、使いながら守る>ことによって、空間文化を形成してきた。都市には見られないものであり、学ぶべきものがある。でも農家のあり方をそのまま真似すれば良いという訳ではない。それは主体とその目的に応じつつ行われなければならない。
最後に。斉藤一雄は東北の文化を調査しに行っている。
はじめ中尊寺や毛越寺の庭園を見て、圧倒された。それは京都の優美繊細なイメージとは明らかに異質のものであった。その力強いエネルギーがどこからくるものか、わからなかった。
しかし、東北の人々とのふれ合いや地域の景観の内に、何となく同質のものが感ぜられてきた。
庭園のみをいかに分析しても十分にその意味を感じ取ることができなかった。その背後に東北の自然と社会に生きる人間のいとなみ―風土の魂を深くさぐることによって理解できた。このデザインへの理解は、いかに生きるかの問題に具体的につながっていくと、そう知った。
現代の都市が何か雑然としているのは、単に見た目の問題だけだとは言えないと思う。そこには生き方が現れている。
逆に言えば、自分ちの庭についてちょっと考え直してみることは、自分の生き方を見直すことにもなるのかもしれない。マンションに住んでいた人が、庭付きの戸建て住宅に移り住んでしばらくすると考え方に明らかに変化が現れたという話を聞いたことがある。
その時、庭という空間が、他の空間との、人間との接点空間であるということを忘れないようにしたい。
接点空間というのは、海と陸、山と平地といったものから、庭と公道なども挙げられる。
そしてそうした空間の関係は、そんなに簡単な構造ではなく、それぞれの具体的な環境形の中で位置づけられ意味づけられている。
接点空間は、異質な空間をつなぐ空間といえる。それについて斉藤一雄はこう述べている。
空間処理の中で、最も要点となるものは異質空間間の接点処理である。なぜかというと、空間の矛盾が激しく触れ合うところは空間の境界領域であるからである。例えば家と庭の接点は壁や窓やテラスであったり、縁や沓脱石(くつぬぎいし)、たたきなどの軒内であったりである。・・・この空間処理の良否や面白さの有無が両空間の流れを、つまり人の行動的反応システムを決定する決め手のひとつとなる。したがって、矛盾のあり方を把握することがまずもって重要である。
自然と人間生活との関係、また人間同士の関係でさえ極度に分化している今日、接点空間を見直すことが必要なのではないだろうか。
空間の形態は大きく“開放”と“閉鎖”とに分けられる。つまり接点空間が開放的か閉鎖的か、ということである。
日本の庭園には大きく3つの流れがあって、
①高度に洗練されたいわゆる日本庭園
②明治以後新たに日本の風土に溶け込んだ外来の様式の庭園
③農家の庭
いわゆる日本庭園は、外部と隔絶することによって別天地としての空間を形成する傾向を持っていた。
それに対し農家の庭は生産と生活のふたつの環境を統合して、その職業の性質上、意図的に、風土、つまりまわりの自然システムと密接に関連してきた。ここでいう農家の庭は、農民の成長によって、ようやく近世以降形をなしたものである。
日本庭園は外部と隔絶しているとはいえ、客観的には周辺の環境に支えられてその命脈を保ってきたものである。それ単体では存続できないといえる。そうした庭園が環境悪化(川や海が埋め立てられる、など)によって劣化を余儀なくされ、その存立のために改めて地域環境システムとの関係を重視せざるをえなくなったとき、社会を含む周辺環境システムと一体となって発達してきた農家の庭は、その意味では先見的な立場をとることが出来る。
現代の住宅の庭は、どうだろうか。
最近各地にできつつある、外見上美しい新住宅団地の問題がある。そこでは、おしきせの住宅の外構と庭とが並んでいる例が多い。しかし、10年経過した住宅地の例では当初のおしきせの植栽デザインに対して、かこいやベランダの植栽等によって、次第に個性化の徴候があらわれつつあり、そこに皮肉にも住宅庭園の本質を発現させる契機が見える。住宅の庭は、人が自らの環境を自由にコントロールできる現在唯一といってよい場であって、本来画一的なものではありえない。
現代は、国土的、或いは国際的スケールで空間秩序の形成が進められているのであって、庭園の位置づけもそれに従って動いている。・・・しかしそこには主体の選択の自由があっても、自由に環境をコントロールして、個人の複雑な人間性の開発に応じうるものがない。・・・相互関係は、タテワリ社会といわれる様なつながり方や、ヒューマンスケールを超えた文明の展開や、文化の複雑な分化などによって、何が真の問題で、どのような相互関係で社会が動いているか、いよいよあいまいになりつつある。いわば、<自己を見失いつつある時代>という時代背景を考慮しないわけにはいかない。画一的な住宅計画は、このような没個性的な社会的性格を反映したものと思われる。
親和力の高い空間間はそれなりのやわらかな接点が可能となる。室内と庭との接点空間としてよく指摘される軒内空間のデザインは、室内と庭とをどうつなぐかにかかり、それは室内と庭との空間質から規定されると同時に、その処理の仕方によって、両空間の質が高まったり弱まったりする。
単に都市の庭、農村の庭という様に、形態機能的にわりきって、分けてしまうのではなく、その形成理念に注目すべきだ。相互に栄養を取り合って、新たな現代の庭とにわとを方向付けるべきときである。これからは、主体とその目的に応じつつ、地域環境システムの整備と密接に関連して、地域と共に生きる多様な庭園と<にわ>とを創出する、ということが現代の庭園文化の必然的な、基本的な課題だと思うものである。
農家の庭園は、自然のポテンシャルを<守りながら使い、使いながら守る>ことによって、空間文化を形成してきた。都市には見られないものであり、学ぶべきものがある。でも農家のあり方をそのまま真似すれば良いという訳ではない。それは主体とその目的に応じつつ行われなければならない。
最後に。斉藤一雄は東北の文化を調査しに行っている。
はじめ中尊寺や毛越寺の庭園を見て、圧倒された。それは京都の優美繊細なイメージとは明らかに異質のものであった。その力強いエネルギーがどこからくるものか、わからなかった。
しかし、東北の人々とのふれ合いや地域の景観の内に、何となく同質のものが感ぜられてきた。
庭園のみをいかに分析しても十分にその意味を感じ取ることができなかった。その背後に東北の自然と社会に生きる人間のいとなみ―風土の魂を深くさぐることによって理解できた。このデザインへの理解は、いかに生きるかの問題に具体的につながっていくと、そう知った。
現代の都市が何か雑然としているのは、単に見た目の問題だけだとは言えないと思う。そこには生き方が現れている。
逆に言えば、自分ちの庭についてちょっと考え直してみることは、自分の生き方を見直すことにもなるのかもしれない。マンションに住んでいた人が、庭付きの戸建て住宅に移り住んでしばらくすると考え方に明らかに変化が現れたという話を聞いたことがある。
その時、庭という空間が、他の空間との、人間との接点空間であるということを忘れないようにしたい。
by santos0113 | 2010-04-11 22:51
けだるい様。
by santos0113
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