連戦連敗

連戦連敗

安藤 忠雄 / 東京大学出版会

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自分たちの思いと、現実の諸条件との折り合いがつかずに行き詰り、苦しむのはいつものことで、結局計画中断という事態も少なくはないし、コンペに挑戦しても、大抵が敗退に終わっている。都市への提案に至っては、実現に至るどころか、聞いてももらえないことがほとんどです。…特に現在は、社会が建築を必要としていない。

30年余りの建築家としての仕事、それも敗退に終わったコンペを通して、安藤忠雄の建築への、またそれに限らず建築を通した社会への考えが述べられている。「連戦連敗」というタイトル通り、ことごとく負けに負けまくっている安藤忠雄の姿が見られる。
ところが、結果はまたしても落選でした。
文章中何度も出てくる。爽快な程の負けっぷり。
それでも全体を通して見られるのは、
結果としては私はこのコンペに負けはしましたが、参加したことは決して無駄ではありませんでした。

結果は敗退でしたが、建築の再生という今日的な課題を考える上で、非常に重要な示唆を与えてくれたプロジェクトであったように思います。

といった、あくまで謙虚かつあきらめない姿勢。安藤忠雄という人物の内面を窺い知れる。
そしてあとがきではこう締められている。
私は私なりに、建築との戦いを続けている。これから社会に出て行こうとする学生たちも覚悟しておいたほうがよい。建築家とは厳しく、困難な生き方だ。自らの思い通りに事が進むことなどほとんどない。日々、闘いである。だが、だからこそ建築は面白い。信念をもって、それをつらぬくために闘って生きていく―これほど“自分”を頼りに生きていくことのできる職業はほかにないのだから。

この本は建築の技術論などではない。安藤忠雄の精一杯の応援メッセージ。
設計を行い、その都度反省を繰り返し、安藤忠雄は成長を続けているように思える。設計を通して社会と向き合い、自分と向き合い、結果学ぶものがあるというのは、非常に共感。(僕の数少ない、また規模も比べるまでもない実習と比べるのはおこがましいかもしれないけど)ただ僕に、その過程を繰り返し繰り返し続けることのできる肉体的、精神的頑強さが、あるいは設計という仕事に対する誠実さが果たしてあるのだろうか。(やってみなきゃ分からないだろう)という思いとは反対に、僕は何となく無いだろうな、という答えを出してしまっている。

建築への考えについて。
私は、建築は機能を持つことで現代に適応してこそ生命をもち得るものだと考えています。歴史的建造物もまた博物館的に保存するだけではなく、現代に活き活きと機能させてやらなければ、残す意味はない。

新旧の衝突。ただ古いものを残すのでなく、といって全く新しいものにするのでなく。新しいものと古いものを対話させ、歴史を積み重ねていくところに何か生まれるものがあるのだろうか。
自然を巧みに生かした気候適応の方法といった、その土地の特性をつぶさに読み取り、味方につけていこうとする姿勢は、人間と自然とのかかわりを考える上で最も大切なところです。こうした地域的なものへの眼差しこそが、現代のいわゆるエコロジー建築に欠落している部分のように思います。

先日読んだウィリアム・モリスの庭でも同様の事が述べられていた。さらにプランタゴの田瀬理夫さんも言っていたように思う。今の時代に求められているものであり、これからだんだん出てくるものではないか。
突き詰めていくと、建築の分野で環境問題に対してできる最大の貢献とは、結局何も作らないということになりそうですが、それではあまりに極論になってしまいます。となると、その次には、その規模を極力小さくしようというところに行き着くのではないでしょうか。その時、既存の建物を修復・再生していくということが重要な意味を持って浮上してきます。

自然を破壊するのか、保護するのかという極端な2択だけではない。理想を訴えるだけでは、破壊は進行するばかり。出来ることをやっていこうよ、と。また、
単に自然環境だけでなく、社会的・文化的な環境についても、それぞれの相互作用関係を踏まえて考察することが不可欠なのだと思います。

環境というのは、いろんなものが複雑に絡み合って出来ているもので、それだけ相互作用もあることを考えなければならない。ということは、アプローチの仕方も幾通りもあると考えられる。
建築は、結局そのつくり手である建築家を越え得ないもの。芸術性や論理性を問われつつも、なお社会的産物としての側面をもつ建築に、それでも理念を掲げ、自らの意思を介入させていくのが建築家の仕事だから。


ランドスケープにも、同じことがいえるだろうか。自らの意思を介入するというプロセスはあるだろうか。分からない。
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by santos0113 | 2010-03-05 22:50 | book
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